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日常の一コマや感じたこと。 偏見に満ちたオタク発言とか 二次創作発言などが極めて多し。 良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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 誰かの為に死ぬ。
 何かの為に死ぬ。
 『死ぬ』ことが当たり前すぎて、時々それが空恐ろしくなる。
 今、目の前で笑っている男たちは。
 『死ぬ』ことは考えていても
 『生きる』ことは考えていないのではないだろうか。


「主観の違いだな」

 ぷか、と。
 少々憎たらしいほど暢気な煙草の煙。
 それを悠々と吹かして、目の前の男は微笑った。
 それが少々面白くない女は、目を眇めた。

「そりゃそうですけど。でも、死んだら何もかもそこで終わりじゃないですか。
 家名が大事。主君が大事。誇りが大事。――大事なものだらけのくせに、
 安易に死を受け入れてる気がして、それが凄く嫌です」
 むす、と。
 口をとがらせ拗ねたような声で言えば、男――又兵衛はからからと笑う。
「だから、それが違うと言ってるんだ。――別段、死に急いでるわけじゃない」
 燻らせた紫煙。
 その行く末が命のそれに良く似ている気がして、女はそれを手で払った。
「では、何故。戦などするのですか?…正直、負け戦と分かっているのに」

 郭も外堀も内堀も。
 出丸として築いた真田丸も。
 何もかも崩れた。崩された。埋められた。――無くなった。
 事実上裸城となったこの城には、もう戦う術も守る術も無い。
 老獪たる天下の大狸相手に、野戦を仕掛けて勝てる見込みなど
 無いに等しいのではないか。

 ――此処は、もう。
 死にゆく者の棲む城。黄泉の城。
 ヨモツヒラサカを越えて、千引の岩が開くのを待つための枕城。

 それなのに、何故?
 声に出さない想いを。言葉を汲みとったのか、又兵衛は小さく笑う。
 無精ひげ面で、ムサイばかりの中年なのに。
 笑う顔は何処か少年のように見える時がある。――今、この時のように。

「あんた、存外理屈好きだな。――そのくせ、感情で動く」

 こん、と。
 又兵衛の持つ煙管が、煙草盆――その灰吹きを叩いた。
 ぽとりと落ちた灰の塊。ふ、と吹けば飛ぶその様は、今のこの城のよう。

「逆に訊きたい。其処まで分かっているのに、何故あんたは逃げないんだ?」
「!…それ、は…」

 ずばっと心の真ん中を射られた気がして、女は眼を逸らす。
 視線の先で、灰が。その中の埋み火が、ちらちらと女を見ていた。

「負け戦と分かってる。分かっている以上、此処に居ればあんたも死ぬ。
 俺や真田のような武士と違って、あんたは普通の女。戦う術もなけりゃ
 のちのち荒武者に『良いように』扱われるかもしれないと分かっていて。
 ――何故、あんたは逃げない?此処に居る?」

 視線が注がれる。
 又兵衛は答えを待つ。女は言えない。
 答えを知っているのに。

「……逃げても、行くところがないから。それに、私は……」

 ――最後まで、貴方の傍に、居たい。
 例えそれが意味することが、死であっても。

「一緒だよ。俺が今、此処に居るのも」

 優しい声。導かれるようにそちらを見ると、又兵衛は微笑っていた。

「軍師だ武辺者だと騒がれても、所詮俺たちは単なる戦バカなのさ。
 戦のない世になど、生きる道は無い。居場所などない。
 穏やかに暮らす生き方を知らない。――だったら、最期くらい。
 己の意思で決めたい。ま、花と散るを美学とは言わんがな」

 ――何が一緒だ、と。
 女は再び目を逸らして、唇をかんだ。
 根本的なところで、全く違うではないか。

「…やっぱり私には分かりません。又兵衛さんの言ってることは、
 死にたがりにしか聞こえません」

 最後の最期まで。
 この人と自分が交わることは無いのだと。
 それが酷く悲しい。

「その『死にたがり』にだって、見栄と夢くらい、あるさ」

 ぼそ、と呟かれた言葉。
 視線を向けると、少々ばつが悪いような。
 困った顔をしている又兵衛が居た。

「負けると分かっていることと、実際に負けることは違う。
 何があるか分からないのが戦なんだからな。…だから、もし。
 この戦に勝てたら。――死ぬことが出来なかったら。
 その時は、刀を捨てても良いんじゃないかと」

 がしがしと。照れたように頭を掻く又兵衛。
 不思議そうな黒い瞳に、口をへの字にしてそっぽを向いた。

「――まぁ、その時。俺に付いてきてくれるようなモノ好きが
 居れば、の話だが」
「!……居ますよ。きっと。どうしようもないような、モノ好きが」

 何だか妙に嬉しくて。おかしくて。
 くすくすと笑った女。
 笑うな、と制したその手を、又兵衛はそっと女の手に重ねる。


 ころり、と煙管が床に落ちた。







      †
…長い!(笑)
でも又兵衛話は書くの楽しいv(ヲイ)
相変わらずニセモノだなぁとは思いますが(苦笑)
真田丸潰されてるので、夏の陣直前の一場面。
又兵衛第四弾(待て)にして、初のほの甘。
…だが、違う。
又兵衛さんはもっとこう…フランクで理詰めで。
でも女心に疎い人なんだ!きっと!(落ち着け)
駄文ですが此処まで読んでいただき、多謝!
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