日常の一コマや感じたこと。
偏見に満ちたオタク発言とか
二次創作発言などが極めて多し。
良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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「もし、あんたの言うことが事実だとして」
手慰みのように、くるりと回した煙管。
それに合わせてたなびく紫煙を見つめる私に、彼は。
――又兵衛さんは、にやりと人の悪い笑みを向ける。
「あんたほどの変わりモノも珍しかろうよ」
「…人を珍獣のように言わないでくださいよ」
非常に不服そうに言うと、呵々と又兵衛さんは笑う。
無精ひげで、ぼさぼさの散切り頭で。
ガタイの大きさも相まって、一見するとぼけーっとした。
口も悪く、歯に衣着せない無神経な中年のおっさんなのに。
――この人の瞳は、とても穏やかで優しい。
そのくせ、何処か孤独を浮かべている。
それが、とても性質が悪いと私は思っている。
そこに、どうしようもなく惹かれてしまうのだから。
「実際、珍獣の様なものじゃあないか。
あんたのような女は見たことがないし、聞いたこともない。
俺だけでなく、この城に居る全ての人間がそういうだろうよ。
――まぁ、明石殿辺りは『神の御使い』とでも言って、
充分納得しそうだがな」
「…神様の使いだったら。こんな戦、指先一本で
ちょちょいっと終わらせますよ」
むす、と。子供のように拗ねて見せた。
だって本当にそんな力があれば。
私は、この大坂衆に。
――又兵衛さんに、完全な勝利と栄光を与えてあげるのに。
失いたくない人。
恋する、人。
手を伸ばして、隣に座るその人の――
又兵衛さんの袖を、きゅ、と軽く握った。
「――なぁ。未来にも、残るんだろう?」
ぽつりと又兵衛さんが呟く。
何のこと?と問えば、少し苦笑して私を見た。
「文。…あんた、太閤殿が残した願文、見たんだろ?」
「秀吉の願文?…はい。確かに見ましたけど」
病気の母の身を案じ。
せめて三年。ダメなら一年。それも無理なら三ヶ月。
寿命を延ばしてくれと祈願し、奉納した願文。
展示されたそれを、私は見た。
頷く私に、又兵衛さんも頷く。
そして少し。本当に少しだけ照れたような顔で、そっぽを向いた。
「あんたの言うことが正しくて。どんなに俺たちが頑張ったところで
結果を覆せず、大坂方が負けたとして。――その時は、あんたに
ここに居てほしくない。未来に戻ってほしいと思っている。
あんたが生まれ育った、戦のない、世界に」
「…私が、邪魔ってことですか?」
共に死ぬことも許さないほど。
そう思って訊ねる私に、違う、と彼は力強く首を振る。
「俺はあんたに、生きててほしいのさ。何があってもな。
戦の汚れも痛みも、俺達が背負って逝けば良いから。
――だが、それでも俺はあんたに未練を残すだろう。
だから、もし…あんたが未来に戻ってくれたら。
俺はあんたに宛てた文を、必ず残す。あんたの手に渡るよう、
必ず守らせる。届けさせる。――過去から、未来のあんたに」
だから、と。
大きな手が私の頭の上に乗って、ぐりぐりと不器用に撫でた。
「俺が死んでも、未来で待っていてくれ。
俺は必ず、あんたのもとに戻ってくるから」
――なんて人。
なんて、勝手で。我儘で。私の気持ちなんて無視して。
優しいのと同じくらい、残酷な人。
それでも、私は貴方のことが――
「約束破ったら。後藤又兵衛は大嘘吐き、って。
子々孫々に語り継ぎますからね」
泣きそうだな、と自分で分かった。
そしてやっぱり、頬を涙が零れおちていった。
泣くなよ、と困った声。
それが耳のすぐ近くで聴こえて――
髭の痛さとくすぐったさに、
思わず笑ってしまった。
†
仄かに甘めな又兵衛さん文。
需要なくてもご閲覧いただき多謝v
文中にある、秀吉の願文を。
「清水寺秘宝展」なる展示でみてきまして。
近くに家光が寄贈した釣り灯籠(だったっけか)が
置いてあって、何か凄くロマンでした。
戦国の世が、すぐ身近にあるなぁって。
それを見ての、上記妄想。
秀吉の願文一つで、
何故か又兵衛さん妄想できる管理人が怖い。
手慰みのように、くるりと回した煙管。
それに合わせてたなびく紫煙を見つめる私に、彼は。
――又兵衛さんは、にやりと人の悪い笑みを向ける。
「あんたほどの変わりモノも珍しかろうよ」
「…人を珍獣のように言わないでくださいよ」
非常に不服そうに言うと、呵々と又兵衛さんは笑う。
無精ひげで、ぼさぼさの散切り頭で。
ガタイの大きさも相まって、一見するとぼけーっとした。
口も悪く、歯に衣着せない無神経な中年のおっさんなのに。
――この人の瞳は、とても穏やかで優しい。
そのくせ、何処か孤独を浮かべている。
それが、とても性質が悪いと私は思っている。
そこに、どうしようもなく惹かれてしまうのだから。
「実際、珍獣の様なものじゃあないか。
あんたのような女は見たことがないし、聞いたこともない。
俺だけでなく、この城に居る全ての人間がそういうだろうよ。
――まぁ、明石殿辺りは『神の御使い』とでも言って、
充分納得しそうだがな」
「…神様の使いだったら。こんな戦、指先一本で
ちょちょいっと終わらせますよ」
むす、と。子供のように拗ねて見せた。
だって本当にそんな力があれば。
私は、この大坂衆に。
――又兵衛さんに、完全な勝利と栄光を与えてあげるのに。
失いたくない人。
恋する、人。
手を伸ばして、隣に座るその人の――
又兵衛さんの袖を、きゅ、と軽く握った。
「――なぁ。未来にも、残るんだろう?」
ぽつりと又兵衛さんが呟く。
何のこと?と問えば、少し苦笑して私を見た。
「文。…あんた、太閤殿が残した願文、見たんだろ?」
「秀吉の願文?…はい。確かに見ましたけど」
病気の母の身を案じ。
せめて三年。ダメなら一年。それも無理なら三ヶ月。
寿命を延ばしてくれと祈願し、奉納した願文。
展示されたそれを、私は見た。
頷く私に、又兵衛さんも頷く。
そして少し。本当に少しだけ照れたような顔で、そっぽを向いた。
「あんたの言うことが正しくて。どんなに俺たちが頑張ったところで
結果を覆せず、大坂方が負けたとして。――その時は、あんたに
ここに居てほしくない。未来に戻ってほしいと思っている。
あんたが生まれ育った、戦のない、世界に」
「…私が、邪魔ってことですか?」
共に死ぬことも許さないほど。
そう思って訊ねる私に、違う、と彼は力強く首を振る。
「俺はあんたに、生きててほしいのさ。何があってもな。
戦の汚れも痛みも、俺達が背負って逝けば良いから。
――だが、それでも俺はあんたに未練を残すだろう。
だから、もし…あんたが未来に戻ってくれたら。
俺はあんたに宛てた文を、必ず残す。あんたの手に渡るよう、
必ず守らせる。届けさせる。――過去から、未来のあんたに」
だから、と。
大きな手が私の頭の上に乗って、ぐりぐりと不器用に撫でた。
「俺が死んでも、未来で待っていてくれ。
俺は必ず、あんたのもとに戻ってくるから」
――なんて人。
なんて、勝手で。我儘で。私の気持ちなんて無視して。
優しいのと同じくらい、残酷な人。
それでも、私は貴方のことが――
「約束破ったら。後藤又兵衛は大嘘吐き、って。
子々孫々に語り継ぎますからね」
泣きそうだな、と自分で分かった。
そしてやっぱり、頬を涙が零れおちていった。
泣くなよ、と困った声。
それが耳のすぐ近くで聴こえて――
髭の痛さとくすぐったさに、
思わず笑ってしまった。
†
仄かに甘めな又兵衛さん文。
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文中にある、秀吉の願文を。
「清水寺秘宝展」なる展示でみてきまして。
近くに家光が寄贈した釣り灯籠(だったっけか)が
置いてあって、何か凄くロマンでした。
戦国の世が、すぐ身近にあるなぁって。
それを見ての、上記妄想。
秀吉の願文一つで、
何故か又兵衛さん妄想できる管理人が怖い。
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