日常の一コマや感じたこと。
偏見に満ちたオタク発言とか
二次創作発言などが極めて多し。
良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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筋違御門の傍。
八辻ヶ原の隅、土手を背にして、絵師のセンセーは
茣蓙に座っている。
膝もとには、赤、黒、朱、白、黄色、藍、と色とりどりの砂を詰めた
袋があって、センセーはそれを右手で掬っては地面にこぼす。
指を緩めれば太い線。締めれば細い線。
巧みに使い分けて、さまざまな絵を描いていく。
今もまた、目の前の書場簾(かんばす)に、美しい八重垣が
描きあげられた。
白い顔に少しだけ色気があって、見物人の足が止まる。
「――相変わらず、上手ですよね」
センセーの目の前。屈みこんで八重垣姫を覗き込む娘が言った。
視線を寄こしたセンセーに、少し笑って見せる。
「褒められりゃあ、嬉しくねえこともねえがの。
それにはまず、見料を放ってからにしてもらいてえな。
なぁに、一分も寄こせたぁ言わねえ。一文でも二文でも。
おめえさんの気のままで結構」
「そう言われると、一文や二文じゃあ、逆に恥ずかしいですよ」
娘は笑って、一分、紙に包んで差し出した。
センセーの指さす先――見料を入れる盆へと落とす。
センセーは、にやっと笑って、芝居がかった仕草で頭を下げた。
「こりゃあ、どうも。あんたが弁天様に見えてきたよ」
「あたしでも、センセーの目には、弁天様に見えますかね?」
「見える見える。その気になりゃあ、遥か伝説の美女、お市の方すら、
おまえさんの前じゃあ色あせるだろうよ」
「…そこまでいくと、白々しすぎます」
娘が顔をしかめる。センセー、からからと笑って
「色があせりゃあ、確かに白くもならぁな。
――で?何の用かえ?おれに何か用があるから、
稼ぎをほっぽり出してまで、此処に来たんだろう?」
と言って、傍に置いていた貧乏徳利を傾けた。
センセーの喉仏が上下するのを見ていた娘は、少し、笑う。
「センセー言ってたでしょう?銭さえ払えば、何でも書くって」
「ああ、言った。見料さえ貰えりゃあ、何でも望みのままに
書いてしんぜよう」
唇をゆがめるセンセー。だったら、と娘は言った。
「あたしを書いてほしい。センセーの目に映る、あたしを」
「なんだって?……そりゃあ、難しい注文だの」
センセー、珍しく少し困った顔をした。
それを覗き込んで、娘は思い切り苦笑する。
「やっぱり、あたしじゃ絵になりませんか。
――ああ、もう良いですよ、センセー。
ちょっとした冗談です。今のは忘れてください」
苦笑をすこしだけマシな笑みにして、娘は立ちあがる。
センセーに反論させないまま、柳原土手の方へと駆けて行った。
センセーは浮かしかけた腰を、そのまま下ろす。
ばつが悪そうな顔で、ぼりぼりと蓬髪を掻いた。
「……そんなもん書いたら、消せねえじゃねえか」
店じまいをするとともに、絵は小箒で掃いて消している。
折角書いた娘の顔――
それも、好ましい娘の顔ならば、どうしてそれを消せようか。
ましてや、己の目に映る、などと条件をつけられては、
心の想いを告げるのと同じことだ。
センセーは深々と溜息をついて
もう一度貧乏徳利をあおった。
†
あんまり好きすぎて、ちょっと書いてみた。
センセー相手の夢小説みたいな(笑)
こんな感じのセンセー(勿論、本物はもっと素敵ですが)
興味がありましたら、『なめくじ長屋』シリーズをどうぞv
(お前は回し者か/笑)
八辻ヶ原の隅、土手を背にして、絵師のセンセーは
茣蓙に座っている。
膝もとには、赤、黒、朱、白、黄色、藍、と色とりどりの砂を詰めた
袋があって、センセーはそれを右手で掬っては地面にこぼす。
指を緩めれば太い線。締めれば細い線。
巧みに使い分けて、さまざまな絵を描いていく。
今もまた、目の前の書場簾(かんばす)に、美しい八重垣が
描きあげられた。
白い顔に少しだけ色気があって、見物人の足が止まる。
「――相変わらず、上手ですよね」
センセーの目の前。屈みこんで八重垣姫を覗き込む娘が言った。
視線を寄こしたセンセーに、少し笑って見せる。
「褒められりゃあ、嬉しくねえこともねえがの。
それにはまず、見料を放ってからにしてもらいてえな。
なぁに、一分も寄こせたぁ言わねえ。一文でも二文でも。
おめえさんの気のままで結構」
「そう言われると、一文や二文じゃあ、逆に恥ずかしいですよ」
娘は笑って、一分、紙に包んで差し出した。
センセーの指さす先――見料を入れる盆へと落とす。
センセーは、にやっと笑って、芝居がかった仕草で頭を下げた。
「こりゃあ、どうも。あんたが弁天様に見えてきたよ」
「あたしでも、センセーの目には、弁天様に見えますかね?」
「見える見える。その気になりゃあ、遥か伝説の美女、お市の方すら、
おまえさんの前じゃあ色あせるだろうよ」
「…そこまでいくと、白々しすぎます」
娘が顔をしかめる。センセー、からからと笑って
「色があせりゃあ、確かに白くもならぁな。
――で?何の用かえ?おれに何か用があるから、
稼ぎをほっぽり出してまで、此処に来たんだろう?」
と言って、傍に置いていた貧乏徳利を傾けた。
センセーの喉仏が上下するのを見ていた娘は、少し、笑う。
「センセー言ってたでしょう?銭さえ払えば、何でも書くって」
「ああ、言った。見料さえ貰えりゃあ、何でも望みのままに
書いてしんぜよう」
唇をゆがめるセンセー。だったら、と娘は言った。
「あたしを書いてほしい。センセーの目に映る、あたしを」
「なんだって?……そりゃあ、難しい注文だの」
センセー、珍しく少し困った顔をした。
それを覗き込んで、娘は思い切り苦笑する。
「やっぱり、あたしじゃ絵になりませんか。
――ああ、もう良いですよ、センセー。
ちょっとした冗談です。今のは忘れてください」
苦笑をすこしだけマシな笑みにして、娘は立ちあがる。
センセーに反論させないまま、柳原土手の方へと駆けて行った。
センセーは浮かしかけた腰を、そのまま下ろす。
ばつが悪そうな顔で、ぼりぼりと蓬髪を掻いた。
「……そんなもん書いたら、消せねえじゃねえか」
店じまいをするとともに、絵は小箒で掃いて消している。
折角書いた娘の顔――
それも、好ましい娘の顔ならば、どうしてそれを消せようか。
ましてや、己の目に映る、などと条件をつけられては、
心の想いを告げるのと同じことだ。
センセーは深々と溜息をついて
もう一度貧乏徳利をあおった。
†
あんまり好きすぎて、ちょっと書いてみた。
センセー相手の夢小説みたいな(笑)
こんな感じのセンセー(勿論、本物はもっと素敵ですが)
興味がありましたら、『なめくじ長屋』シリーズをどうぞv
(お前は回し者か/笑)
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