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まさに、一瞬だった。
煌く光を見た瞬間、彼の躯は背後の襖を押し倒し、冷たく硬い床板に
激しくたたきつけられた。
身を起すよりも先に、煌きの光源──白銀に輝く剣が彼の頬を撫でる。
不幸中の幸いか、それとも相手の配慮か。
それは刃ではなく峰の方。安堵するよりも、少し、興味が湧いた。
「…賞金首に、情けかけるのか?姐さん」
素直に問うと、目の前の遊女の目が、に、と笑った。光を背負った
白い顔と、臙脂の紅。見慣れたはずのそのパーツが、何故こうも
この女だと違って見えるのだろう?
「情けだと思うか?こんな似合いもしない恰好……遊女のフリまでして
七日も待った獲物に?」
玲瓏たる声。口調こそぶっきらぼうなものだが、何処か葛藤を感じるのは
気の所為ではないと彼は思う。
「なんだ、違うのか?…だったらさっさと斬った方が良いと思うな。俺は。
今の物音聞いて、役人や他の賞金稼ぎが来る前に、ばっさり殺った方が
姐さんの為だぜ?横取りされたかぁねーだろ?七日も待った獲物をさ」
己の命がかかっていると言うのに、彼はいたって暢気に笑った。目の前の
白く美しい顔に、微かな驚愕が広がる。──それが、どうにも面白かった。
「お前……自分の命が惜しくないのか?」
恐る恐る…と言うよりも呆れたように訊ねる女に、彼は、まさか、と答えた。
「てめぇの命が惜しくねぇ奴なんざ居ないわな。でも、まぁ……人間いつかは
死ぬもんだ。しかもそれが賞金首なんかになってちゃ、生きるも死ぬも常に
五分五分。どうせ死ぬなら極上美人の柔肌の上……と思ってたけど……」
一旦言葉を切って、彼は、くつりと笑う。金の瞳が細められるその仕草は、
何処か猫を髣髴とさせて、女は一瞬目を奪われた。
彼は、そっと静かに手を伸ばして、女の頬にかかった一筋の髪をそっと撫で付けた。
「姐さん、アンタは中々の上玉だ。アンタになら殺られても良いぜ?」
…こんな感じのお話書きたいです( ̄▽ ̄)