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日常の一コマや感じたこと。 偏見に満ちたオタク発言とか 二次創作発言などが極めて多し。 良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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 遠くの方から、微かに鐘の音が聞こえる。
 その音を目で追うようにして見上げれば、少しばかり金色を含んだ
 雲が、ゆっくりと家路を辿っていた。

「……日が落ちるのが早くなりましたね。直に暗くなるでしょう」
 独りごちて、グレミオは視線を前方へと移す。
 木枯らしを浴びてハタハタと踊るのは、左右で色の違うバンダナ。
 随分とくたびれた生地のそれは、もう擦れてボロボロで。
 端の方は色さえ解からないほど褪せてしまって、解れた糸が
 物哀しげに踊っていた。


「──……あの時も、こんな風に寒かったな…」


「?ぼっちゃん…?」
 不意にぽつりと呟いた主に、グレミオは目を瞠る。それが解かったのか
 主はゆっくりと振り返ると、滅多に見せない笑み──口の端をほんの少しだけ
 上げる程度で、よほど親しくないと笑みと解からないほどの──を浮かべて見せた。
「アイツが、俺のところに現れた日。……あの日も、こんな風に木枯らしが吹いてた」
 アイツ、と主が口にするのは、きっと彼女のことだ。

 この広い世界で唯一人、主が受け入れた女性。
 黒髪と黒い瞳が印象的で、穏やかに微笑む──まるで春の陽だまりのような女性。

 脳裏に浮かんだ面影を見抜いたのか、主の笑みが少しばかり深くなった。
「そう、そいつだ。──本当に、おかしな女だったな」
 くつ、と笑みを零す主。蒼い瞳が、心なしか優しく輝いている。
「このクソ寒い中、湖のど真ん中で溺れてたんだからな。何処の阿呆な草かと
 思ったものだ」
 くつくつと笑って。主は一度言葉を切った。木枯らしが吹きすさぶ草原に、彼女の
 面影を探すように。
「こんな世の中で、笑ってしまうくらいクソ真面目で。反吐がでそうなほど奇麗事だけ
 並べ立てて。喧しいくらいお節介で。鬱陶しいくらい泣き虫だった」
「……そんなこと言ってるのを聞いたら、あの方も怒りますよ?」
 苦笑交じりに忠言するも、事実だ、と真っ向から跳ね除けられた。
 それでもグレミオは、それ以上は何も言わなかった。主がこれほどまで饒舌に
 何かを語ることは珍しい。寡黙で、人と交わることを避けている人なのだ。

 しかも、彼が直々に彼女についての心情を語ることなど、今まで一度も無かった。

「如何しようもないバカだったが、愚かではなかった。何時でも気が付けば傍に居て、
 ぎゃーぎゃーと要らぬお節介を焼いてた。……でも、俺はそれが嫌じゃ無かったよ」
 ふ、と。少しばかりバツが悪そうに呟く声音は、痛々しいほどに無垢なもの。
「──否、嫌いじゃなくなっていった、が正しいな。最初は不愉快極まりなかったから。
 ……ただ、思うんだ。俺を<普通の人>として扱ってくれたのは、身内以外では
 アイツだけだったんじゃないかな、ってな…」

 微苦笑交じりの声音を、木枯らしが浚っていく。
 また遠くで、鐘の音が響いた。


 ──雲は、金色から茜へと染まっていこうとしている。





──…See you next  Seen…






今更ながら、このぼっちゃんは「ヒース(当家四男坊/笑)」です。
…ていうか、これちゃんとオチまで書けるのか?(物凄く疑問)
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