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「──もう、決めたことだから」
内に秘めた言葉を、改めて声にする。
どんな敵と戦うよりも、ずっと怖くて恐ろしい言葉。
自分の情けなさに嫌気がさしながらも、勇気を振り絞って形にした。
けれど、零れた言葉は確実に己の心をも切り裂く。
ズキリと激しい痛みに耐えるため、彼は瞳を閉じた。
──否。
怖かったからなのかもしれない。
目の前の黒い瞳に、真っ向から見つめられるのが怖かったから。
だからきっと、自分は目を閉じた。
目を閉じて、耳を塞いで。
それきり口を噤んだ。
コチコチと、背を向けた現実で時を刻む時計。
痛いほどの沈黙が躯に、そして心に圧し掛かった。──その時。
「……解かりました」
ぽつり、と。
全身が震えるのを必死で堪えながら、彼女が呟く。
弾かれたように顔を上げた彼の目に飛び込んだのは、痛々しくも健気に
微笑む彼女の顔。懸命に口角を上げて、目を優しく細めて。
「あなたの考えを、尊重します。──だけど、許したわけじゃない。
本当は、絶対に認めたくない。……でも」
零れ落ちるのは、震える声と透明な雫。それを正視できなくて、彼は目を伏せた。
「私はあなたが大好きです。それだけは、どうか忘れないで。
──……いってらっしゃい」
微笑む顔は、何処までも優しく。そして哀しげだった。
†
「──あ、小父さんだ!!いらっしゃい」
にっこりと微笑むのは、まだ五つかそこらの少女。
黒髪に黒い瞳。無邪気に笑って、てけてけと走ってくる。
「こんにちは。──元気だったか?」
少女を抱きとめて、高々と抱き上げると、うん!と元気よく頷く。
「最近凄く寒いけど、あたし、一度も風邪引いたことないのよ。偉い?」
「ああ、それは凄いな。──お母さんは、居る?」
「うん、あっちで編み物してる。──待ってて、呼んで来るから!」
にっこりと朗らかに笑って、少女は再びてけてけと駆けて行った。
そんな後姿を目を細めて見送り、彼は少しだけ悲しげに目を伏せた。
父と名乗ることを諦め、ただひたすらに妻子を見守ると決めた。
時をともに重ねることができないならば、余計な傷を作るまい──そう決めて、
彼女達を置いて独り旅に出た。
それでもこうして時折戻ってきてしまうのは、やはり自分が弱いから。
せめて一時でも、彼女と娘の傍に居たかった。──赤の他人として、でも。
そんなこと気にしなくても良いのだ、と説得する彼女を振り切ってでも
旅に出たのは、偏に彼女達を世間の遠慮ない目から護る為。
歳を取らぬ自分が傍に居たのでは、きっと何時か深い傷を与えてしまう。
(…解かっていたことなのに、どうして俺はアイツを娶り、子をなしたんだろう…)
幾度となく脳裏を過ぎった疑問。全く悔恨しなかったと言えば嘘になる。
でも、それでも。
(……どうしても、お前との絆を断ち切りたくなかった。手放したくなかった。
何があっても、傍に居て欲しいと思った。……そういえば、お前は笑うか?)
思いをめぐらす相手は、何時だって穏やかに微笑んでいる。
近づいてくる二つの足音を聞きながら、彼はただ静かに佇んでいた。
──…See you next Seen…
展開、早っ(笑)
どうやら娘だったようです。お子様は。
続きにて、拍手コメントのレスやってまーす。
To<1月15日にコメントくださったお嬢さん>
この度は、こんな拙いブログ小説に拍手くださって…しかもコメントまで
書いてくださって有難うございます(^▽^)v
最初は続けるつもりはあんまりなくて(ヲイ)、半分冗談だったんですが、
気づけばこれでもう6回ですよ(笑)
感じとしては、あと2、3回で終了ってトコでしょうか。…あくまで予定ですが(^^;)
それでも、此処までヘタることなく続いてるのは、偏にこうして感想を
下さる貴女のようなお嬢さんが居てくださるからです(^^)v
本当に感謝しております。有難う。
倖せいっぱいの坊夫妻を、早くも今回辛さに突き落とす神埜は鬼です( ̄▽ ̄;)
神埜だったら「いってらっしゃい」とは言えないなーなんて思いながら。
自分の娘に「いらっしゃい」と言われる坊は、辛いなんてもんじゃないだろうなぁ。
──それでも、きっと自分のルーツを繋ぐことができたのだから倖せだろうと。
そう、思いたい今日この頃(笑)
流石に「グレミオパパがね~」と言わせなかったのは、最後の良心です(爆)
長くなってしまいましたが、この辺でお暇いたします(><)
最後にもう一度お礼を。有難うございましたv
ダメ管理人道まっしぐらな神埜ですが、これからもどうぞご贔屓くださると嬉しいです。
(※日本語可笑しい)