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日常の一コマや感じたこと。 偏見に満ちたオタク発言とか 二次創作発言などが極めて多し。 良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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「俺は……間違っていたんだろうか」
 ぽつりと、自分でも意識しない声音で呟く彼を、従者の男は静かに見やった。
「如何したんです?坊ちゃんらしくもない」
 極力穏やかに、優しく声をかける男──グレミオに、彼は少しだけ視線を向けた。
 不安と、苦悩。
 後悔と、哀しさの入り混じった、蒼い瞳。
「俺は彼女達の倖せを願って、父として、夫としての己を殺した。名乗ることが出来ずとも
 元気な姿を見れるだけで良かった。倖せそうに暮らしている姿を見ると、旅空の辛さも
 寂しさも、何もかもが吹っ飛んだ。──…でもそれは、俺のエゴでしかなかった…」

 今なら解かる。
 何故彼女が旅立ちを許さなかったのか。
 きっと何時かこんな日が来ることを、彼女は知っていたのだ。
 父と名乗らず、夫としての身の置き場も捨て、何もかも彼女一人に押し付けて旅立った。
 ──否、逃げた。
 老いない自分。死なない自分。最も親しき者の魂を好んで喰らう呪いの紋章を持つ、自分。
 そんな自分が人並みの倖せを願って、乞いて。そして、人並みの責任は放り出した。
 そのツケを支払う日が、そう遠くないことを、彼女は知っていたのだ。
 しかも、その代償が途轍もなく大きくなってしまうことも。

「何が倖せを願うだ…!何が見守るだ!!──俺は、誰一人として倖せにすることが出来ない!
 倖せどころか…心をかければかけるほど、相手を傷つけて不幸にすることしか出来やしない…」
 くしゃ、と前髪を握り締める拳が、痛々しいほどに震える。
 坊ちゃん、とグレミオが呼ぶ声すら、今の彼には届かなかった。
「…坊ちゃん、お気持ちは解かります。ご自分を責めるのも、無理は無いことです。…けれど、
 今するべきことは、己を責めて、甘美な自己嫌悪に陥ることですか?」
「!?」
 壮年の域に入っても、なお変わらぬ柔和な微笑を湛えたグレミオ。その口から零れる辛辣な
 言葉に、弾かれるように彼は顔を上げ、信じられない、と言った風にグレミオを見上げた。
 それに構わず、グレミオは言葉を継ぐ。

「坊ちゃんのお決めになったことに、グレミオは口を出すつもりはありません。坊ちゃんが考えて
 考えて、これしかない、とお決めになったことです。是も非も、私にはありません。
 けれどね、坊ちゃん。坊ちゃんが決めたことならば、その結果には坊ちゃんが責任を負わねば
 ならないのですよ?──奥様と、お嬢様、お二人の関係が気まずくなってしまった原因が
 坊ちゃんにあるのでしたら、…今、坊ちゃんの為すべきことは、嘆くことでは無いと思いますよ?」

「グレミオ……」
 頼りなげに揺れる瞳。幼い頃を髣髴とさせるその瞳に、グレミオはにっこりと優しく微笑みかけた。
「大丈夫ですよ、坊ちゃん。お嬢様は、奥様に似て非常に気丈で優しいお方です。それに、もう
 幼いばかりの子供でもありません。──全て、お話しましょう?」
「だが……だが、あの子は父親など大嫌いだと……」
 グレミオから目を逸らし、右手で左腕を押さえ、己自身を抱きしめ、守る。
 如何して良いのか、解からない。答えが目の前にあるのに、それは選びたくない。──けれど。
「坊ちゃん、また逃げるおつもりですか?──今度逃げたら、本当に大事なものを
 失ってしまいますよ?今度こそ、永遠に」
 グレミオは幼子にするように。いまだ少年のままの主をやんわりと抱きしめた。
「怖いでしょう。恐ろしいでしょう。…現実は残酷です。怖くてたまらないことばかりです。だけどね、
 坊ちゃん。坊ちゃんは、お一人ではないのですよ?坊ちゃんを心から愛した奥様が居るのです。
 そして、私も……」
 一度言葉を止めて、グレミオは抱きしめたままの彼の瞳を覗き込んで、にっこりと微笑んだ。


「世界中の全てが坊ちゃんの敵になっても、グレミオは永遠に坊ちゃんの味方です」


 だからどうか怖れないで──……
 言葉にならないいとおしい思いを込めて、グレミオはあやすように彼の背中を叩いた。
 彼の決意が言葉になるまで、さほど時間は掛からなかった。
 ──あの扉を開けば、きっと沈黙が降りたままの母娘が居る……。




 ──…See you next  Seen…




なんだか坊ちゃんがヘタレっぽいような…( ̄▽ ̄;)
続きにて、拍手コメントレスやってまーす。

<2月7日に拍手とコメントを下さったお嬢さん>
貴重な拍手とコメント、誠に有難うございました~vv
いやはや、のらりくらりと、風の吹くまま、サイコロの出るまま…に更新している
ブログ小説に、温かいお言葉を頂き、感謝感激でございます(^^)v

お互いがお互いを思いあっているがゆえの、悲劇というか何と言うか。
誰も悪くないんだけど、あえて悪い、って言えばやっぱり坊が悪いんでしょうね。
その理由は、今回のお話に組み込んでますが(^^;)
まぁでも、そんな弱さを持った坊ちゃんを愛して、丸ごと包み込んで受け止めた
奥様(笑)の血を引くお嬢さんですから。きっと受け入れて笑ってくれると
思いますよ。
個人的に、あんまり哀しい話は書きたくないので。精々切ないという程度が
良いんじゃないかなーと思ってます。哀しい話は精神的に辛いので(笑)

ダメ管理人の代名詞=神埜の躯の心配まで有難うございます(^^)
寒い寒いと言いつつ、神埜の棲息地は雪が降らないので、とりあえず大丈夫かと
思われます。何とかは風邪を引かない、と言いますし(爽微笑)
新作…連載に出来るかどうかはちょっと怪しいところになってますが(ヲヒ)、
近々二つ三つアップできるのではないかと。稚拙な作品ながらも、楽しんで
もらえれば幸いです(^^)

それでは、この辺で。
また遊びに来てくださいねv有難うございました(^^)vv

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