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日常の一コマや感じたこと。 偏見に満ちたオタク発言とか 二次創作発言などが極めて多し。 良く分からないと言う方は、回れ右推奨です。
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 暦の上では立秋を過ぎたとはいえ、まだまだ夏の名残りが
 濃い日が続いている。
 時折ツクツクボウシが最後の恋唄を歌う中、少女が一人、
 田舎道を歩いていた。
 年の頃は十六かそこら。艶やかな髪を娘島田に結いあげて、
 鼈甲の櫛と、花簪を挿している。当代流行りの黄八丈を来ているが、
 その材質は他の町娘と比べて明らかに上質――おそらく、絹。
 時折吹く涼しい風に目を細め、ふと足を止めた。
 辺り一面、目に眩しい黄金色の海。収穫を間近に控えた、稲穂の
 頭が、涼風に揺れてまるで波のようだった。

「――お嬢さん……!」

 背後から若い男の声で、少女を呼ぶ者が居る。少女はそれに
 応えて振り返った。若い男が後ろから駆け寄ってくるのが見える。
「お嬢さん、やっと追い付いた…!」
「あら。別に付いてきてほしい、なんて言ってませんのに」
 荒い呼吸を整える男――その身なりは薩摩絣の着流し。腰に大小を
 佩いた、二十五、六の男だった。
 髪を後ろで一括りにしていて、髷を結っていない。とはいえ、大小を
 許されているのだから、間違いなく侍なのだろう。
 歳も上、身分も町女の少女と若侍で全く違うというのに、少女はそれを
 気にした様子もなく、つん、とそっぽを向く。
「あのな、お嬢さん。お前さんが付いてきてほしい、って言わなくても、
 お前さんが出かけるならお供するのが、俺の仕事なの。分かってるだろ?」
 些か呆れたように言う若侍。そんな彼を、じろりと少女は睨めつけた。
「そんな事、お父っつあんが決めた事で、私が決めた事ではありません。それに
 『笹葉屋』では随分とお綺麗な茶屋女に鼻の下を伸ばしていらっしゃったでは
 ありませんか。…別に私の供などせずとも、お好きなだけ遊んでいらっしゃれば
 よろしいのです。どうせ、小娘のお供など瑣末な事なのですから」
 冷静だが一気にそう言って、少女はまた歩き出す。

「お嬢さん」
「知りません。さっさとあの方のところにお戻りなさい。…使いなど私だけで事足ります」
「お嬢さん…!」
「お行きなさいったら…!――今は貴方の顔も見たくありません…!」

 あくまでも前を向いたまま、少女は言う。背後で、若侍は小さく溜息をついた。


「――さくら」


 不意に呼ばれた名に、少女――さくらの足が再び止まった。後ろから、
 近づいてくる足音がする。
「そんなに拗ねるな」
「…別に拗ねてなど居りません」
「そういうところが、拗ねてるっていうんだ」
 近づいた気配が、そっと後ろからさくらを抱きしめる。放して、という声は全く
 無視された。

「――要らぬ心配をするな。……俺の惚れた女は、さくらだけなんだから」

 耳を擽る甘い囁き。かっ、と頬に朱が走り、さくらの体が強張る。
「っだ、誰かに見られますっ!…放してください…!!」
 嫌だと言いながらも、けして本気で彼の腕をはがそうとしないさくらに、彼は
 くすりと笑った。
「こんな田舎道に、そんな野暮な奴が居るものか。――せいぜい、其処の案山子
 くらいのもんよ」
 それでもあまり苛めるのは可哀想――というより、色気が出ないうちに――なので
 彼はさくらを解放した。
「――さ、野暮用などさっさと済ませて帰ろうぜ?今夜は旦那と芝居見物に行くつもり
 なんだろ?」





                         †


……あまりにも。
あまりにも書きたかったから、とりあえずこれでお茶を濁す(笑)
時代物、何時か書けたら良いなぁ……。
(※恐れ多いから黙りなさい)
 
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