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――どうしても行くんですか?
何度目ともしれない質問を口にする。
同じ答えが返ってくると知っているのに。
すぐ傍に居る彼が、振り返った。
案の定、その顔には困ったような微笑が。
「…ごめんね。でも、決めたことだから」
「そんなの知らない」
荷造りする手を止めないのが気に入らない。
だから近づいて、荷物を引ったくってやった。
睨む私を見て、やっぱり彼は微笑う。
ほんの少しだけ、困った顔で。
「やれやれ…それが欲しいならあげるよ」
特に困る訳じゃなし、と。
本当にさほど困らない、という顔をする。
――それがまた、無性に腹立たしかった。
「欲しいのは、こんなものじゃない」
分かっているくせに。
私が一番、欲しい『もの』。
何があっても、手放したくないもの。
全部、知ってるくせに。
知ってるくせに、知らないふりをする。
――それが一番、腹立たしくて哀しい。
「行かないで、って言ってるのに」
何処にも行かないで、と。
何度も何度も何度も何度も。
壊れたオルゴールみたいに呟いた。
何処にも行かない、と。
何度も何度も何度も何度も。
壊れたオルゴールみたいに、貴方は囁いた。
「全部、嘘にするつもりなの?」
悔しくて悲しくて。――同じくらい、寂しくて。
泣いてなんかやらないと決めてたのに。
涙があふれて止まらなかった。
「うん。――全部、嘘にするよ」
あっさりと。
拍子抜けするくらいあっさり、彼は言った。
「だって」
困った顔。困っても微笑う顔。
「僕にとって」
伸ばされる手。革手袋。
――その下に何重にも巻かれた包帯。
「一番大事なのは」
触れようとして、今更。
それを、怖気づいて止まる、貴方の手。
「君だもの」
今更。
今更今更今更今更。
「この呪われた紋章が、君の魂を欲しがる限り。
僕が君の前に現れることはない」
今更。
今更今更今更今更。
こんなにも。
――こんなにも。
「また、僕がこの紋章を手放すこともない。
僕はこれの守人であり、生贄だ」
こんなにも。
――私の心を、奪っておいて。
「だからね?……さよなら」
淡く微笑む顔。
嘘つきの、顔。
嘘が上手なくせに。
こういう時だけ、嘘が下手なんて。
なんて、ずるい人。
「――さよならなんて、言わない」
貴方にも言わせない。
私は彼の手を握る。
今更のように己で厭う、その右手に。
放せと叫ぶ前に、この手の甲に
唇で、触れてやった。
「またね、って言うよ。だから貴方も
またね、って言って。
――さよならじゃない。
私が死んだら、きっとここに来る。
貴方の傍に。
誰よりも傍の、この右手の中に」
私は、ずっと待ってるから。
貴方が私の傍に戻ってきてくれることを。
「だから」
貴方よりもずるい仕打ちを、どうか許して。
「またね、マクドールさん」
また会えるって知ってれば。
一時の別れなど、怖くないんだ。
だから、またね。
「また君に会えるって、信じてる」
†
――此処を見てくれていると言う。
そのお言葉を頼りに。
どうか届いてください。
また改めて御挨拶に行く所存ですが…。
貴女が居てくれたから、今の私が居て。
今こうやって、ネットの片隅で
細々と作品展示できているんだと。
改めて、不思議な縁と言うか運命と言うか。
そういうものを感じています。
有難うございます。
貴女は、私の大事なお友達で。
大事な恩人です。
――最後の坊の台詞は、今の気持ちです。
またお会いできると。
心から信じております。
大好きなソウルメイト。
Aさんへ。